自己肯定感は
なぜ育たないのか
どうすれば育つか
十一月二十一、二十二日、チャイルドライン全国フォーラム2009in千葉が、幕張の海外職業訓練協会で開催されました。その中で「子育てハッピーアドバイス」シリーズの著者、明橋大二氏の講演会が行われましたので内容をお知らせいたします。
最近、子どもたちが被害者、加害者になる事件が多く報道されています。そして「今の子ども達は何を考えているのか分からない」等子どもが否定されるコメントが多く出されています。しかし、本当の問題は、別のところにあります。それは、「自己肯定感」の低さにあります。特にこれらの低くなった子どもに心配な症状や、行動が出てきています。
摂食障害の人の手記より
「私はやっぱり誰からも必要とされていないんだよ。誰からも、大切だとおもわれていない。私の事なんて、放っておいても気にならないんだよ。私は誰かにとって、大きな存在、大切な存在、必要な存在、そんな人間ではないんだ。そんな人間にはなれないんだ。どうでもいい存在。いてもいなくても、誰も気にとめない。だから死んでも全然何も変わらない。いらない人間なんだよ。もうこれ以上、そう思い知らされるのはイヤ。私の存在が、必要ないなら、今すぐ死ぬ。殺してほしい。
私の中の心はもう死んでいるから、身体を殺して。みんなずるい。心はメチャクチャに傷つけて、殺してしまったのに、身体は残すなんて。ちがう、心を殺したのは私だ。誰のせいでもない。私だけが、私を傷つけて殺したんだ。誰かを悪者にするなんて、なんて最低な人間なんだろう。苦しんで当然。大嫌いなのは、私自身。誰かを嫌いなんて、そんな事思ってはいけない。」
自己肯定感とは
私は存在価値がある、必要な人間だ、大切な人間だ、私は私でいいんだ、という気持ちのことを言います。
日本青少年研究所が平成二十年度に「中学生、高校生の生活と意識に関する調査」をしました。結果「自分はダメな人間だと思うか」という問いに、日本の子どもは米国の子どもの三倍以上がそう思うと答えています。もちろん国民性や文化の違いもありますが、ほかのどの調査をみても、日本の子どもの自己肯定感の低さは突出しています。
どうしたら自己肯定感持てるようになるか
〇歳から三歳の間に「自己肯定感の土台」が出来上がります。お母さんに抱っこしてもらったり、おっぱいを吸わせてもらうことを通じて自分は大切な人間であるという気持ちが育まれます。
その土台ができて初めてできるのが「しつけ」です。三歳から六歳の間に、自分の物と他人の物の区別がつき、順番が守れるようになります。
そして、その上に成り立つのが「勉強」です。二つの土台がしっかりできていると、六歳ごろから様々な好奇心が生まれ、勉強することで知識が身に着くようになります。
自己肯定感が低くなると
「どうせ」という言葉がでてきます。この言葉はSOSのサインの一つです。すでに自信を失いかけているので、叱ってはいけません。
自己肯定感はなぜ低くなるのか
虐待・ネグレクト
大人のストレスのはけ口になって、サンドバックのように扱われています。夏休み等長い休みには給食がないので、なかなかご飯が食べさせてもらえません。こんな状態では自分が大切な人間だなんて思えるわけがありません。
いじめ
親の愛情を受けていても、学校で無視され言葉の暴力といういじめにあい、存在そのものを否定されれば、だれでも自己肯定感は低くなってしまいます。
いじめられていると、大人に相談してきた時に「なんであんたばっかり、もっと強くなりなさい、言い返したら」と言ってはいけません。それができたら相談なんてしません。耐えに耐えて、どうしようもないから相談してきた気持ちを考えましょう。「お前にも悪い所があるからいじめられるんだ」などと言おうものなら、二度と子どもは相談できなくなります。そして自分はいじめられて当然だと思うようになってしまいます。
いじめられるのに理由なんてありません。
いじめられる子の中に理由はありません。いじめる子が人工的に創り出し、お前が悪いんだと洗脳していくプロセスなんです。
ですから子どもがいじめられていると言ってきた時には「あなたはちっとも悪くない、いじめる方が間違っている」ということをきっちり伝える事が大切です
昔と違い親との関わりが希薄。
社会の変化で、しかたがないことですが、大人と子どもが過ごす時間が圧倒的に少なくなっています。子どもとすれば、せっかくお母さんと一緒にいる時くらい甘えたいのに実際はせかされ、叱られ通し。つらい気持ちがたまってしまうのです。
自己肯定感が低くなった子どもがとる態度
㊀しゃべりまくる
自分をアピールすることでかまってもらえるので、そんなに心配はいりません。
㊁自分がいい子になって親から褒められて安心しようとする。
妹、弟の面倒をよくみたり、「おかあさん疲れたでしょ、お茶でもどうぞ」というように子どもがよい子であると、親から手のかからない子だと判断され、よけいほったらかしにされてしまいます。本当の自分をさらけだすと親から見放されてしまうのではないかという不安をもっています。手のかからない良い子の方が危ないのです。
最近の事件に共通すること
事件を起こすまでは、まじめ、良い子と評されることが多いです。自分は良い子じゃないといけないと思い込んでいて、その背伸びが爆発し、事件を起こします。だから最近の事件は最初に起こした問題行動が殺人事件だったりします。
今の教育で問題とされていることは
㊀学力(学力が落ちている)
㊁しつけ(ルールが守れない)
これらは自己評価・自己肯定感の土台がきちんとできていないことが一番の問題です。
子どもの心はどのように成長していくか
子どもは依存と自立を行ったり来たりしながら育っていきます。依存は甘え、自立は反抗の事です。
生まれた時は依存した状態です。手を握る、ハグするといったスキンシップをはかる事で子どもは心地良くなります。自分は大切にされているという自己評価が育ちます。
しばらくすると、不自由だと思い、自由になりたいと思うようになります。これが意欲となり、自立へと向かいます。そうすると今度は不安が芽生え、また依存に向かいます。この繰り返しにより自己肯定感が出来上がっていきます。
しかし、この行ったり来たりが子どものペースで進まなくてはいけません。「お母さんは、忙しんだから自分でやりなさい。あなたもう一年生でしょ。」や「ちょっとお母さんにかしてごらんなさい。まだ一年生なのだからやってあげる。」などです。大人の都合で突き放したり、かまったりではいけません。
甘えさせると甘やかす
自立と甘えは両極にありますが、甘えさせてはいけないという事ではありません。
甘えさせると甘やかすの区別が大事です。甘えさせるのは○で甘やかすは×です。甘えさせるは情緒的な要求に答えることです。
たとえば「抱っこしてお話聞いて」といった類です。
甘やかすというのは、物質的な要求に答える事です。
子どもが不安になって、できないと言ってきた時には答えてあげて下さい。突き離しすぎるとどこかへ転がって行ってしまいます。子どもの心はたまごと同じで、締め付けるとこわれてしまいます。程よい力で支え続けてあげて下さい。
思春期で反抗期になったら
中学二年生頃には、第二次反抗期を迎えます。何も話さなくなったり、「べつに~」「びみょ~」しか言わなくなったり。それまでの子育てが間違っていなかったことの証明です。「反抗したら見放されるのでは?」と心配だったら、そんなことはできません。
子どもに自己肯定感をはぐくむ具体的なかかわり方
・小さい時にスキンシップをしましょう。
自分が大切にされていて、自分の存在をお母さんは喜んでくれていると感じます。
・子どもの話をしっかり聞く。
相手の話を真剣にきいてやるということだけで、あなたは大切な存在だという事が伝わります。
・相手の言葉を繰り返す
「○○でくやしかったんだ~」相手から返ってくるとわかってもらえたと思います。
・子どもの頑張りをみとめてねぎらう
「がんばれ」には言ってよい人と悪い人がいます。今までのがんばりが否定されていると感じる人もいます。だから「がんはれ」よりも「がんばってるね」という言葉のほうがよいかもしれません。
・一番簡単で有効なのはありがとう
「ありがとう」はお礼と同時に相手の存在価値を高めます。自分でも人の役に立つんだ、必要とされているんだという気持ちになります。ですから「ありがとう」は出し惜しみせずに言っていただきたいと思います。
子どもにキレてしまう
親がキレるのは、子どもに関わっている証拠です。キレるのもOKです。たまには親のストレスのはけ口になりなさい!これでギブアンドテイクです。
長所を伸ばす
子どもが持っている良いものを見つけて伸ばしていくことが大切です。大人が子どもを変えようと思うと、子どもは否定のメッセージと受け取ってしまいます。 これがこの子なりの精一杯なんだと思うと、良い所が見えてきます。
母親へのサポート
子育てに頑張っているのは大部分がお母さんです。その中で心配なお母さんもいます。自己肯定感が低い人です。自分の非を認められないのです。自分に余裕、自信がないのです。子どもとともに支える必要があります。
お母さんは、子どもが何か問題を起こしたというだけで、自分が責められているような気持になってしまいます。まずは、ここまで育ててきてくれたお母さんを「ねぎらい・ほめる」事が大事です。
子が宝なら母も宝、みんなで支えていきましょう。
子育てに手遅れはありません。やり直しはいつからでもできます。
紹介された絵本
くまのこうちょうせんせい
「子どもは明るく元気が一番と、大人は思い込んでいます。でも本当は子どもは小さくて弱いものなのです。子ども達の痛みを分かち合うのが、大人の役目だとおもいます。」